2014年02月13日

2月13日 書評:「黄金のバンタム」を破った男 百田尚樹 著




ボクシングファンにはたまらないノンフィクション。著者のボクシングへの愛情が伝わる好著である。


安全でリスクの少ないインプラント治療を追求する、千葉は幕張新都心のインプラント専門医、古賀テクノガーデン歯科の古賀です。本日のブログは、書評を。

よくも悪くも何かと話題の百田氏の、これはノンフィクション。日本のボクシング史を俯瞰もできるので、とても興味深かった。

子供の頃から格闘技ファンであった私。幼稚園年長のころのプロレスに始まり、カシアス・クレイ(モハメド・アリ)、ジョー・フレージャー、フォアマン、日本の大場政夫、柴田国明など、よく観てたなあ。

ゴメスというフェザーの名選手もいた。ロイヤル小林とのKOアーティスト決戦など、今もはっきり覚えている。芸術的な左フックでしたな。

ところで、この本はかつての名ボクサー、ファイティング原田のノンフィクションである。同時に、日本のボクシング史的な側面も持つ。それで本書は、戦後まだ日本社会に戦争の傷が癒えてない頃、初めて世界チャンピオンになった白井義男の話から始まる。

戦争で選手としての全盛期を喪失したかに思えた白井を、米国人のカーン博士が見出し、真の情愛で結ばれた師弟愛で成長し、当時のすべての日本人に勇気を与えた日本人初の世界チャンピオンになる話。

もう、これだけで、感涙モノの素晴らしさである。カーン博士は米軍の将校である。ところが、趣味としてボクシングを詳しく知っている人物であった。白井に対して衣食住の面倒までみながら、丁寧にボクシングを教えた。

苦労の末、ようやく、世界チャンピオンに挑戦できるとき、カーン博士が白井に言った言葉。「ヨシオ、キミはこの試合に勝利することで、敗戦で失われた日本人の自信と気力を呼び戻すのだ。」と伝えたという。

この試合、後楽園球場に4万人以上が集まり、リングサイドには高松宮ご夫妻、三笠宮殿下、当時の官房長官を始めとする政治家達、そして有名俳優陣がずらりと並んだという。リングへ向かう白井は、負けたら、生きては帰れないと覚悟したらしい。

戦争での軍隊経験を持ち、それを生き抜いて戦後、苦労してここまで辿り着いた白井の悲壮な感覚を、現代のわれわれが実感することは難しい。オリンピックのプレッシャーどころではなかったはずである。

なんといっても、当時のボクシングの世界チャンピオンは世界に8人しかいない。現在は、乱立していて、メジャーな団体の世界チャンピオンだけでも70人もいるのだ。階級も、現在は当時の2倍以上ある。。3階級制覇なんていっても、重みが全然違う。

そして、白井は自らの実力と、カーン博士との出会いを通じた強運で挑戦のチャンスを掴みとった。そして、当然ながら、数回の防衛戦のあと、多くのチャンピオンたちと同様に、白井もグラブを置く。

しかし、その後の人生もカーン博士と共に過ごした。カーン博士、本当に白井との絆は深かったようだ。

資産家の御曹司として生まれ、生涯独身であったカーン博士。出会った時、すでに56歳だったそうで、結局、米国に帰らず、白井のファイトマネーの33%もらう権利を有しながら、いっさい手を付けない人でもあった。

白井がチャンピオンベルトを失った後も、白井夫妻と一緒に暮らし、親子のごとく接していたらしい。奥様も、理想的な舅でしたと述べている。

後に、重い認知症を発症したカーン博士を生涯にわたって面倒を見続けた白井夫妻。死後は、シカゴの大富豪であったカーン博士の全財産は白井に残されたのである。生前、カーン博士は、ボクシングの興行などの汚さを嫌い、白井に関わることを禁じたという。白井も、それをまた、生涯守った律儀な男であった。

ともあれ、白井がタイトルを失ってから、8年間、日本人ボクサーに世界チャンピオンが誕生できなかった。

白井がタイトルを喪失した昭和29年。ファイティング原田、つまり当時の原田少年はまだ小学校6年生であった。腕のいい植木職人の父のあとを継ぎたいと思っていた原田少年であったが、父が仕事中の事故で職を失うと、貧乏のどん底が待っていた。

高校進学を諦め、そして、精米屋で働く原田にとって、白井の存在は、人生の希望そのものだったようである。

そして、原田は、持ち前のファイトと根性、そして誰にも負けない猛練習によって、世界チャンピオンへの階段を登り始めるのであった。

なにせ、原田さんの性格がいいし、破ったエデル・ジョフレは、オールタイムのベストバンタム級ボクサーのほまれ高い名選手である。

微妙な判定で原田に敗れた時、無敗の王者ジョフレは、にっこり笑って原田の手を上げてくれたという。そのことを読売新聞紙上で、原田本人の言葉で語られていたことを読んだことがある。

そして原田も三階級制覇がかかった試合、オーストラリアでのアウェー戦で、疑惑の判定(というより明らかな誤審)に涙を飲む。そのとき、原田も同じことをしたという。

男らしい、誇り高いボクサーたちの物語。単に原田だけでなく、他のカッコいいボクサーたちの生き様もいい。勝負にはっきりした明暗はつきものだが、単に勝ち負けの悲喜こもごもだけではない、凛とした生き方に共感するのである。

肉体を消耗し、命をかけて戦う男たちのノンフィクション。読後感がとても爽やかであった。おすすめ。

taketo_koga at 10:37コメント(0)トラックバック(0) 
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